「アイヌ逓送人 吉良平治郎」道内巡回公演
日時 : 平成20年11月29日(土)
場所: 札幌市教育文化会館大ホール
担当者: 伊勢事務局長・加賀選定委員
11月29日、「アイヌ逓送人 吉良平治郎」道内巡回公演の今年最後となる札幌講演に2名で伺ってまいりました。
何度も道東地区では公演された有名な物語で、大正時代に郵便物の輸送中に殉職したアイヌ民族の吉良平治郎(1886-1922)を描いた釧路演劇集団の市民劇です。札幌公演は昨年の1月以来2度目となります。
劇団員約50人が俳優や裏方として参加し、釧路在住のアイヌ民族も数名参加しているそうです。
この日の観客は750人ほどだったそうですが、会場は客層も思ったより幅広く、若い方も混じっていました。
市民参加の演劇でもあり、演技の技量にはちょっと差が有る方も混じっているなあ、と感じる場面もありますが、吹雪の中を足を引きずりながら懸命に進む平治郎の熱のこもった演技に目を潤ませる方も見られました。
国会で6月にアイヌ民族を先住民族として決議されるなど、アイヌ民族の扱いについても大きな転換期を迎えていますが、30年前ならこんな舞台は考えられなかったという「アイヌにやらせる仕事はねえ」など差別のセリフの数々にはドッキリとさせられます。
吹雪の夜中に何十キロのも郵便物をかついで左手足の麻痺した平治郎が16キロも歩いて届ける、という今ではとても創造できない仕事でありますが、差別されていたアイヌ民族がやっとついた仕事に命を賭けて郵便物を守りながら息絶える、という戦前の道徳教育の手本とまでなった壮絶な話であり、当時は全国からの寄付金が当時では考えられないほど集まったそうです。
こうした時代があったんだ、という時代背景の描写に感動し、今自分たちが暮らしている同じ北海道の実話とは想像し難く、まだ祖先達の苦労には知らないことがたくさん有る事を思い知らされる物語でもありました。
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